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印刷やデザイン、アドビ製アプリやスクリプトなど、雑多な技術ブログ

同人誌の表紙をInDesignで作ろう―前編

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はじめに

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に際して、クリエイターとして超尊敬するめんたいこ(id:kickbase)氏がクリエイティブの力でコロナ危機に立ち向かおうぜと呼びかけ、Fight Against COVID-19(#FAC)という運動をスタートさせました。その趣旨に賛同し、僕もそれに参加させてもらうことにしました。

そこで、クリエイティブ職(アーティスト・デザイナー・プログラマー等職業・職責は不問です)についている我々が自身の持っている知識を共有しあい、技術の力で未来を明るくしていこうという活動を開始しました。 本活動はボランティアベースとし、ハッシュタグfac (Fight Against COVID-19)にて動画チュートリアルやブログ記事の執筆、無料でのツール・スクリプトの配布など、各人ができることで皆の不安を解消し、来るコロナ危機後の世界に備えて行きたいと考えています。

クリエイティブの力でコロナ危機に立ち向かおうぜムーブメント、はじめました。 - kick the base

免責事項

本記事で紹介する機能やツールを利用して印刷された印刷物の責任は、あくまで印刷を依頼したご本人様の責任となります。
本記事によって印刷上のトラブルが発生しても責任は一切負えないことを予めご承知おきください。

何する?

僕にできることってなんだろう。そもそもクリエイターと呼ぶにはクリエイトしていないし。とか考えあぐねていたのですが、クリエイターさんたちを応援することはできるかなと思い直しました。僕が持っている印刷・DTPの知識を伝えることで、ちょっとでもクリエイターさんたちのお役に立てればと。

そこで考えたのが同人誌作りのハウツーです。今回は表紙の作り方を取り上げます。
本文(中の文面)を作るにはWORDやRe:VIEWvivliostyleなど、ツールはいろいろありますね。でも表紙はどうしてますか? InDesignはページものの書籍をつくるツールだと思われがちですが、表紙やカバーなどのいわゆる付き物の作成にも非常に効果的です。
Adobe Creative Cloudに契約していることを前提に、InDesign、Adobe Fontsなどを使って、表紙の作り方をご紹介します。

特に言及しない限り、この記事は macOS Mojave(10.14.6)、InDesign 2020(15.0.2)で解説します。

InDesignで表紙を作るメリット

実は全部をInDesignで作る必要はありません。オモテ表紙*1自体はIllustratorで作り、それをInDesignに配置するという方法でも構いません。それだけでも、表紙の台紙としてInDesignで作るメリットはあります。
それは束幅(背幅)の調整が容易であること、折トンボをわざわざ描く必要がないことです。
さらに、すべてのレイアウトをInDesignで行うことで、デザインを流用したサイズ違いの別のもの、例えばポストカードやポスターをかんたんに作成することができます。今回はこのあたりまで解説したいので、すべてのレイアウトをInDesignで完結させます。

同人誌の表紙作成

僕が技術書典で頒布した同人誌「InDesign × Google Apps Script ―ルビ振りAPI編」をサンプルにして制作過程を説明します。

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InDesign × Google Apps Script -ルビ振りAPI編

ここからは実際にInDesignを使って表紙を作っていきますが、下記のような順序で解説します。

  1. InDesignの設定
  2. ドキュメントの作成(本記事はここまで)
  3. 図案の配置
  4. PDFの出力
  5. ポストカードとポスターを作る

InDesignの各設定や機能さえ理解していれば、図案の配置以外はほとんど時間がかかりません。ただ記事がとんでもなく長くなってしまったので分けて掲載します。今回の記事では、ドキュメントの新規作成までを書いています。

InDesignの設定

まずInDesignを起動し、下記の設定を確認しましょう。これらは印刷品質に関わるものです。

  • カラー設定
  • [黒]スウォッチのオーバープリント

カラー設定

ドキュメントのカラーモードのことではなく、InDesignのカラー設定を確認します。あまり難しく考えなくて大丈夫です。

InDesignのメニューバーから 編集>カラー設定... をクリックします。

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カラー設定
開いたダイアログの 設定 という項目が、一般用 - 日本2もしくはプリプレス用 - 日本2であることを確認してください。
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設定の項目を確認
この2つの設定の違いはRGBの作業スペースのカラープロファイルです。前者はsRGB、後者はAdobe RGBになります。単純にCMYKのデータで作成する場合はどちらでも大丈夫ですが、RGBのデータを扱う場合は注意してください。ICCプロファイルそれ自体については本旨から逸れるため割愛します。今回はCMYKベースでデータを作成することを前提として話を進めます。

余談:カラープロファイルの同期

先ほどのカラー設定のダイアログの上部が「未同期」となっていました。

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同期設定が未同期の場合
実はAdobe CCのアプリケーションではこのカラープロファイル設定をまとめて同期させることが可能です。

Adobe Bridge 2020を起動し、メニューバーから 編集>カラー設定... をクリックします。

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Bridge 2020のカラー設定ダイアログ
すると、上部に「同期しています」と表示されます。下部の適用というボタンを押すとAdobe CCの各アプリケーションとカラープロファイルを同期できたことになります*2
確認のためにまたInDesignのカラー設定を見てみましょう。
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カラープロファイルの同期完了
このようになっているはずです。このようにすると、InDesignだけでなく、Illustrator、PhotoshopなどほかのAdobe CCのアプリケーションのカラープロファイル設定もまとめて設定することができます。

[黒]スウォッチのオーバープリント

InDesignでは、デフォルトの[黒]スウォッチ100%を自動的にオーバープリント*3にすることができます。デフォルトではオンになっていますが、念のため確認しておきましょう。

macの場合は、パネルメニューの InDesign>環境設定>黒の表示方法... をクリック。Windowsの場合は ファイル>環境設定>黒の表示方法... をクリックします。

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環境設定メニューはOSによって場所が違う(図はmac)
ダイアログ中央のチェックボックスがオンになっていることを確認してください。
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[黒]スウォッチを 100% でオーバープリント

これでInDesignの環境設定はおしまいです。

ドキュメントの作成

設定の確認ができたので、InDesignから新規ドキュメントを作成しましょう。パネルメニューから ファイル>新規>ドキュメント... をクリックします。すると下図のようなダイアログが開きますので、印刷タブをクリックしてください。

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新規ドキュメントの印刷タブをクリック
ダイアログの右側に設定値を入力するエリアがありますので、そこに値を入れていきます。

判型

一般的な同人誌のサイズ(縦向きの場合)は下記になります。

名称 高さ
四六 188 mm 128 mm
A5 210 mm 148 mm
B5 257 mm 182 mm
A4 297mm 210 mm

ページの方向はサイズによって勝手に変わるので気にしなくてOKです。
僕の今回の本はA5サイズだったので、210 * 148mmとします。

綴じ方

綴じ方というと製本様式(アジロ綴じ、無線綴じなど)と間違えそうですが、ここは単純に右綴じか左綴じか、という本を開く向きの設定です。表紙を上に置いたとき、どちらに開くかで右綴じ・左綴じがわかります。

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綴じ方向の確認のしかた
表紙を作るだけなので、ここは正直なところどちらでも大丈夫です。

ページ数・見開きページ

ページ数、見開きページの設定を行います。製本様式によってページ数は変える必要がありますが、見開きページは無条件にオンにしてください。

ページ数ですが、中綴じ*4の場合は2ページとし、それ以外の背(束)が必要な製本様式では3ページとします。要するに真ん中のページが背になります。
参考までにねこのしっぽさんで確認してみると、中綴じ・折綴じと無線綴じあるようです。

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ねこのしっぽさんの製本様式
中綴じ・折綴じではページ数を2ページ、無線綴じでは3ページとしてください。
僕の今回の本は無線綴じとしたので、ここは3ページにします。

開始ページ番号は何でもいいのですが、デフォルトの1としておきます。

裁ち落としと印刷可能領域

裁ち落としは天地左右すべて3mm、印刷可能領域はとりあえず0mmでOKです。

ダイアログの内容確認

最終的にはこんな感じになりました。

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新規ドキュメントダイアログの設定
ダイアログの右下にボタンが3つあるかと思いますが、マージン・段組... ボタンを押してドキュメントを作成しましょう。
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ダイアログのボタン

ドキュメントの設定

すると新しいドキュメントが作成されますが、今度はマージン・段組設定のダイアログが出ます。

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新規マージン・段組ダイアログ
好みで設定してもらっても構いませんが、ひとまずマージンはすべて0mmにしてしまっていいです*5段組は1に、間隔はなんでもいいです*6組方向は横組みとしてください*7

つづく

記事が長くなってしまいましたので今回はここまでです。
ドキュメントはこんな感じになったでしょうか?

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ドキュメントのできあがり
次回はこのドキュメントに表紙のレイアウトを行い、印刷入稿用のPDFを作成します! お楽しみに!

*1:専門的には表1(ヒョウいち)、ウラ表紙は表4(ヒョウよん)と呼びます

*2:うまく同期されないときは、同期したい対象のアプリケーションを全部起動してから、改めて同じことをやってみてください

*3:オーバープリントとは版ずれを防止するための技術です。今回は記事の範囲を逸脱してしまうため説明を割愛しました。
参考:
オーバープリント・ノセ の意味・解説|カラー|デザイン・編集・製版工程|DTP・印刷用語集

*4:中央をホチキスで綴る方式。ねこのしっぽさんでは、印刷して折った本文を別の紙(表紙)でくるんでホチキスで綴るものを中綴じ、くるまずに本文のみをホチキスで綴るものを折綴じと呼ぶようです

*5:InDesignでは「版面(はんづら)」の指定にマージン設定、または段組設定を利用します。書籍であれば本来、適宜マージン(版面の外の余白)を設定しますが、今回は表紙の作成ということと、あとの都合のために0にしています。設定するとページの内側に赤と青の四角形が表示されるようになりますが、これはいわゆるガイドみたいなものでPDFやプリントでは表示されません

*6:段組設定が2以上の場合の、段と段の間の間隔の設定です。デフォルトは5mmです

*7:正直なところ組方向はどっちでもいいのですが、横組のほうが何かとわかりやすいのでそうしました